玖珂郡 錦町 広瀬木谷
広瀬の町の西方に、平瀬ダムが建設候補地として設定されると知って心おだやかでないのは私だけではなかろう。木谷川沿いへの道路の分岐点には、ダム反対の立札が立てられている。堰堤はこのあたりに予定されているようで、そうなると錦川本流では猿飛びの岩庭や須万までの渓谷風景は水没する。猿飛びの石庭とは木谷川との合流点あたりの川中に広く露出している部分をいう。釣や水遊びでけっこう人を引き寄せている。須万までの峡谷部は菅野ダムのせいで水量が減り、やや衰退の傾向があるがまだまだ捨てたものではない。その他、木谷川などいくつかの支流の下半部が消失する。
木谷皮の下半部で惜しいのは、この初瀬の滝の周辺である。合流点から一㌔ぐらいの所で谷は狭まり、深い淵と石渓が姿を見せてくる。それはここに水の尾山の一支沢流入しているからだ。その沢水の加勢によってそのあたりの浸食が加速され、滝や釜、そして岩壁などで迫力のある景観を呈している。
その板ヶ谷の沢に初瀬の滝がある。この滝は大滝二本といくつかの小滝からなり、下の大滝は道路から10㍍ばかりしか離れていないのに直接見えない、引込んだ位置にある。合流点の橋の傍らに車一台分のエリアがあり、気をつけてみるとその滝の水音とともに水しぶきの一部が見える。その高さは18㍍であった。
滝の左岸を高巻く踏跡道をたどり下の滝をやりすごして上の大滝に出られる。この方の高さも18㍍、下の大滝の形が標準的なのに対して、こちらは末広がりの扇形をしている。水量は並といったところか。
この沢のかなり高い所を、大固屋から広瀬方面へのスケールの大きな用水路が通じている。この水路は百年以上も前に藤井吉兵衛の手により建設されたもので、この水路で開けた水田は十三町歩にのぼるという。吉兵衛墾田とよばれる。